民事信託はどんなときに終わる?知っておくべき「終了のルール」と契約書の注意点

民事信託は、「どのようなときに信託が終わるのか?」をあらかじめ正しく設計しておくことが非常に重要です。
ここでは、一般の方が特に注意すべき「信託の終了ルール」について、法律の仕組みを踏まえてわかりやすく解説します。

  1. 「受益者(お父様)」が亡くなっても、信託は自動的には終わりません
  2. 「財産を管理する人(受託者)」が亡くなった場合はどうなる?
  3. 「頼んだ人」と「利益を受ける人」の合意で終わらせる方法と、その注意点
  4. 「目的の達成・不達成」や「権利の放棄」による終了

1.「受益者(お父様)」が亡くなっても、信託は自動的には終わりません

実務で最も多いのが、高齢の「お父様(委託者 兼 受益者)」のために、お子様が財産を管理するケースです。
この場合、多くの人が「お父様が亡くなったら、信託も自動的に終わるだろう」と考えがちです。

【法律の原則】
信託法(163条)の原則では、「受益者(利益を受ける人)の死亡」は信託の終了事由(終わる原因)として書かれていません。
もちろん、信託目的の達成(163条1号)は終了事由ですから、お父様の死亡により、お父様の財産管理という目的は達成したとして、終了と考えることは可能かと思います。

■弁護士からのアドバイス:契約書に特約を書いておく
実務上は信託契約書を作る段階で、「受益者(=委託者=お父様)の死亡によって、この信託は終了する」とハッキリ定めておく(終了事由にする)のが安全でしょう。これにより、お父様が亡くなった後の相続手続き(次の世代への財産引き継ぎ)へスムーズに移行できるようになります。

2.「財産を管理する人(受託者)」が亡くなった場合はどうなる?

では、財産を管理してくれている「お子様(受託者)」が先に亡くなってしまった場合はどうなるでしょうか。
こちらも、法律上は管理者(受託者)が亡くなっただけで信託契約がすぐに終わるわけではありません(信託法163条)。

《管理者(受託者)が亡くなったときの流れ》

  1. 管理者(受託者)の任務が終了します(信託法56条1項1号)。財産を管理する人が不在の状態になります。
  2. 次の管理者(新受託者)を決めます。
  3. もし、次の管理者が決まらないまま「1年間」が経過してしまうと、そこで初めて信託は強制的に終了となります(信託法163条1項3号)。

管理者(受託者)の方に万が一のことがあったときに備え、あらかじめ「次の管理者(第二受託者)」を契約書で指名しておくことが大切です。

3.「頼んだ人」と「利益を受ける人」の合意で終わらせる方法と、その注意点

信託のスタート後であっても、財産を預けた人(委託者)と、そこから利益を得る人(受益者)の2人が「もう信託をやめよう」と合意すれば、いつでも信託を終了させることができます(信託法164条1項)。

■注意!「頼んだ人(委託者)」がすでに亡くなっている場合
お父様(委託者)が、子供の扶養を目的として信託をした場合、お父様が亡くなった後も信託が続きます。
法律のルール(信託法164条4項)では「委託者がすでに死亡している場合、委託者と受益者の合意による終了のルールは使えない」となっています。

ただし、利益を得る人(受益者)は管理者(受託者)受託者に対し、受益権の放棄ができ、受益権を放棄すれば、信託目的の不達成(163条1号)により、信託を終了させることができることは可能かと思います。

4.「目的の達成・不達成」や「権利の放棄」による終了

信託は「目的(例:病気の親の介護費用を捻出するなど)」を達成するために行うため、その目的を達成したとき、または達成できなくなったときには終了します(信託法163条1号)。
この「目的の不達成」を自ら引き起こして信託を終了させる方法として「受益権の放棄」という手続きがあります。

《受益権の放棄による終了の流れ》

  • 利益を受ける人(受益者)は、いつでも「私はこの信託から利益を受ける権利をいりません」と管理者(受託者)に伝える(放棄する)ことができます(信託法99条)。ただし、利益を得る人(受益者)が財産を預けた人(委託者)又は管理者(受託者)の場合は放棄はできません。
  • もし、他に利益を得る人(受益者)がいない場合、「利益を受ける人が当初から誰も存在しない信託」になってしまいます。
  • これにより、信託としての目的達成が不可能(不達成)となり、結果として信託全体が終了することになります。

まとめ:トラブルのない「出口戦略」は弁護士にご相談ください
民事信託は、始めた後のことだけでなく、「どうやって綺麗に終わらせるか(次の世代にどう引き継ぐか)」という出口の設計が極めて重要です。

朝雲法律事務所では、厳格な法律解釈に基づき、ご家族ごとのご事情に合わせた安心の信託契約書をオーダーメイドで作成いたします。どうぞお気軽にご相談ください。