民事信託では、信託財産を管理・運用する受託者が亡くなった場合に、その後の信託をどのように継続するかが重要な問題になります。
後継受託者が決まっているかどうかによって、その後の手続きが大きく異なります。
- 後継受託者があらかじめめ決まっている場合
- 後継受託者があらかじめ決まっていない場合
2-1. 受益者と委託者の合意
2-2. 裁判所への申し立て - 後継受託者が決まらない場合の問題点
- 受託者・信託監督人を置くメリット
1. 後継受託者があらかじめ決まっている場合
信託契約(信託行為)であらかじめ後継受託者を定めておき、その方が就任を承諾すれば、新しい受託者が受託業務を引き継ぐことができます。
2. 後継受託者があらかじめ決まっていない場合
2_1. 受益者と委託者の合意
また、あらかじめ後継受託者を定めていなかった場合でも、受託者の死亡後に委託者と受益者の合意により後継受託者を選任し、その方が就任を承諾すれば、信託を継続することが可能です(信託法62条1項)。
このような場合には、信託事務も比較的スムーズに引き継ぐことができます。
2_2. 裁判所への申し立て
委託者と受益者の合意により後継受託者を選任できない場合は、裁判所に新しい受託者の選任を申し立てることができます(信託法64条4項)。
3. 後継受託者が決まらない場合の問題点
後継受託者が決まらない場合には問題が生じます。
3_1. 信託口口座の凍結
日本弁護士連合会の「信託口口座開設等に関するガイドライン」によれば、新しい受託者が決まるまで、信託口口座は当面凍結されることになります。
3_2. 信託の終了
後継受託者が決まらないまま1年が経過すると、受託者がいない状態が1年間続いた場合となり、信託法163条3号の規定により信託が終了します。
3-3. 信託財産の精算
信託が終了した場合には、信託財産を整理・分配する「清算」の手続きが必要になります。
しかし、この時点でも受託者がいなければ、清算を行う人も存在しません。
そのため、この場合も裁判所へ申し立てを行い、清算受託者を選任してもらう必要があります。
4. 受託者・信託監督人を置くメリット
上記のように、受託者が亡くなった際に後継受託者が決まっていないと、裁判所での手続きが必要になるなど、信託の運営に大きな支障が生じる可能性があります。
そのため、次のような準備をしておくことには大きなメリットがあります。
- 信託契約の中で後継受託者をあらかじめ定めておくこと
- 万一後継受託者がいない場合に備えて、裁判所への申立てなどを適切に行えるよう、信託契約書で弁護士等を信託監督人として置いておくこと
受託者に万一のことがあっても、信託事務をできる限り円滑に引き継ぐためには、信託契約書にはその時に備える設計をしておくことが重要です。
信託契約書作成には、弁護士等の専門家に依頼することがお勧めです。