相続放棄

このページでは、以下のことがわかります。

目次
1. 相続放棄とは?借金がある場合に知っておきたい基本知識
2. 相続放棄の重要な注意点
3. 相続放棄の基本的な手続き方法
4. 借金があるか分からない場合はどうする?
5. 3か月を過ぎてから借金が見つかった場合
6. 相続財産を「処分」すると相続放棄できなくなる?
7. 相続放棄・限定承認をした後に遺産を処分したらどうなる?
8. 相続放棄したことを債権者に証明したい場合どうする?
9. 相続放棄は「GOAL」ではない
10. まとめ|相続放棄は早めの判断と専門家相談が重要です

1. 相続放棄とは?借金がある場合に知っておきたい基本知識

人が亡くなり、ご自身が相続人になった場合、原則として、プラスの財産(預貯金や不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金や保証債務など)も、法律で定められた割合(法定相続分)に応じて引き継ぐことになります。

しかし、相続するかどうかは、相続人が自分で選ぶことができます。
ただし、これらのプラス財産、マイナス財産を一括して引き継ぐか引き継がないかを選べるだけで、都合のいい財産だけ選んで引き継ぐことはできません。

相続には、次の3つの選択肢があります。

相続の3つの選択肢

① 単純承認
プラスの財産もマイナスの財産も、すべて引き継ぐ方法です。

② 相続放棄
プラスの財産もマイナスの財産も、すべて引き継がない方法です。

③ 限定承認
相続によって得た財産の範囲内でのみ、借金などを引き継ぐ方法です。
限定承認は、プラスの財産からマイナスの財産を払い、残った財産を法定相続分に従い分け、借金のほうが多ければ、払えなかった分は免除されるという、相続財産の清算をすることです。したがって、限定承認は、法廷相続人全員がまとまってしないといけません。
亡くなった方に借金しかない場合や、借金のほうが多いと考えられる場合には、一般的に「相続放棄」を選択することになります。

2. 相続放棄の重要な注意点

① 3か月以内に手続きが必要です
相続放棄は、「自己のために相続があったことを知った時」から3か月以内に行わなければなりません。この期間を過ぎてしまうと、何もしていなくても「単純承認した」とみなされ、借金を引き継ぐことになります。
必ずしも亡くなった日から3か月以内とは限らず、亡くなった日より遅い日から3か月をカウントしてくれる場合もありますが、「亡くなった日から3か月以内」と考えて動けば、間違いはないでしょう。

② 相続放棄は「正式な手続き」が必要です
相続放棄は、口約束や話し合いでは成立しません。
たとえば、「私は遺産はいらないし、借金も引き継ぎません」と相続人同士で話し合っても、家庭裁判所で正式な手続きをしなければ、相続放棄にはなりません。
相続放棄は『家庭裁判所に申述書を提出する「要式行為」』です。

3. 相続放棄の基本的な手続き方法

《 申立先の裁判所 》
相続放棄の申立ては、亡くなった方(被相続人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。

《 必要書類と費用 》
主な必要書類は以下のとおりです。
• 相続放棄申述書(裁判所のホームページからダウンロードし、それに記入すればいいです。2枚程度です。)
• 収入印紙 800円(申述人1人につき)
• 連絡用の郵便切手(相続放棄が受理されると、裁判所から受理された旨の用紙が送られてくるので必要です。)

《 添付書類(必須)》
• 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
• 相続放棄をする方の戸籍謄本

さらに、亡くなった方との続柄によって、追加書類が必要になります。
たとえば、父の相続を放棄する場合には、父の死亡が記載された戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本が必要です。

戸籍の収集には意外と手間がかかりますので、3か月ぎりぎりではなく、早めに準備を始めることが大切です。

4. 借金があるか分からない場合はどうする?

「借金があるのか、資産のほうが多いのか分からず、3か月以内に判断できない」というケースも少なくありません。
そのような場合には、家庭裁判所に「熟慮期間(相続放棄するかどうか考慮するための3か月の期間のこと)の伸長申請」を行い、判断期限を3か月よりも長く延ばしてもらうことができます。

5. 3か月を過ぎてから借金が見つかった場合

相続放棄の期限である3か月は、必ずしも「亡くなったことを知った日」から始まるとは限りません。
たとえば、亡くなった後しばらくしてから、保証協会や金融機関から多額の借金の通知が届いた場合、その時点が「相続財産に多額の負債があると知った時」と判断されることがあります。
実際に、大阪高等裁判所の判決(H14.7.3)では、信用保証協会からの残高通知書を受け取った時点が起算点になると判断された例があります。

6. 相続財産を「処分」すると相続放棄できなくなる?

法律では、相続財産の全部または一部を「処分」すると、単純承認したものとみなされると定められています。これを「法定単純承認」といいます。

《 「処分」とされる行為の例 》
次のような行為は、原則として「処分」にあたります。
• 相続財産である債権の取り立て
• 建物の取り壊し
• 相続した債権と自分の債務との相殺
• 遺産の売却や贈与
• 遺産分割協議(大阪高裁H10.2.8)
• 相続財産の預貯金を引き出して使うこと(大阪高裁H14.7.3)
これらを行うと、その後に相続放棄をすることはできなくなります。

《 例外として認められたケース 》
一方で、相続財産から葬儀費用を支払ったり、社会通念上相当な仏壇や墓石を購入したりした場合については、「社会的に必要な行為」として、処分にあたらないと判断された裁判例もあります。

7. 相続放棄・限定承認をした後に遺産を処分したらどうなる?

相続放棄や限定承認が正式に成立した後であれば、その後に相続財産に関する行為をしても、単純承認とみなされることはありません。
この場合、その行為は「相続人としての処分」ではなく、権限のない者による処分にすぎないと考えられています。

8. 相続放棄したことを債権者に証明したい場合どうする?

相続放棄が受理されると、相続放棄受理通知書が家庭裁判所から届きます。しかし、これは単なる事実の通知にすぎず、相続放棄済で支払い義務がないことを証明するものではありません。

例えば、被相続人の債権者から支払いを求められた際、相続放棄済で支払い義務がないことを証明したい場合は、別途、家庭裁判所に相続放棄受理証明書をもらって、債権者に見せたほうがいいです。

9. 相続放棄は「GOAL」ではない

家庭裁判所は、相続放棄の申述書を受理しても、形式的な審査しかしません。相続放棄をする前に、遺産の処分等をした場合は、先ほど述べたとおり、相続放棄は認められません。しかし、家庭裁判所は、相続放棄前に遺産の処分等をしていないかといった詳しい調査をするわけではありません。

したがって、被相続人の債権者は、たとえ、相続放棄申述受理証明書があったとしても、それ以前に遺産の処分等があったので相続放棄は無効などとして、訴えを起こすことは可能です。

10. まとめ|相続放棄は早めの判断と専門家相談が重要です

相続放棄は、
• 期限が短く
• 判断を誤ると借金を引き継いでしまい
• 手続きにも細かな注意点があります。

「借金があるかもしれない」
「何をしてはいけないのか分からない」
「3か月が迫っている」

このような場合には、できるだけ早く専門家に相談することが、将来の大きなトラブルを防ぐ近道です。
朝雲法律事務所では、相続放棄に関する初期判断から、家庭裁判所への申立てまで、丁寧にサポートしています。
少しでも不安がある方は、お気軽にご相談ください。

ぜひ、専門家である弁護士にご相談ください。

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