遺産分割関連審判・調停件数の推移
出典:裁判所「司法統計」令和元年家事審判・調停事件の事件別新受件数より 別表第2調停・審判事件(遺産分割、寄与分、相続人廃除等)の数
1. なぜ遺産分割のトラブルは増えているのか
近年、遺産分割をめぐるトラブルは増加傾向にあります。家庭裁判所に申し立てられる遺産分割関連事件の新受件数は、昭和60年から令和元年までの約30年間で、約2.5倍に増えています。
その背景には、社会構造や家族のあり方の大きな変化があります。戦前の日本には「家制度」があり、家や家業は戸主が引き継ぐものとされていました。しかし、戦後の法改正により家制度は廃止され、相続は「個人の権利」として、相続人全員で平等に分けるという考え方に変わりました。
さらに、離婚や再婚の増加により、相続に関わる家族関係は複雑化しています。面識のない兄弟姉妹や甥・姪と遺産分割の話し合いを行うケースも珍しくありません。また、すべての子どもが平等に相続できるよう法改正が行われたことや、少子高齢化の影響で相続人がいない、または遠い親族が相続人になるケースが増えていることも、トラブル増加の要因となっています。
2. 遺産分割の方法
実際の遺産の分け方には、主に次の4つの方法があります。ここでは、相続人が3人いる場合を例にご説明します。
(1)現物分割
遺産そのものを分ける方法です。
例えば、預貯金1,500万円を3人で500万円ずつ分ける場合や、同程度の価値の土地が3つある場合に、それぞれ1つずつ相続するケースがこれにあたります。また、1つの土地を3筆に分筆して分ける方法も現物分割です。
(2)代償分割
特定の相続人が不動産などを引き継ぎ、その代わりに他の相続人へ金銭を支払う方法です。
例えば、土地やマンションを1人が取得し、残りの2人に相当額を支払います。ただし、支払う側に十分な資金力が必要となる点に注意が必要です。
(3)換価分割
遺産を売却し、その売却代金を相続人で分ける方法です。
現物分割や代償分割が難しい場合に選択されることが多く、マンション1室のみが遺産である場合などが典型例です。
(4)共有分割
遺産を共有名義のまま相続する方法です。
賃貸アパートや駐車場などの収益不動産の場合、共有のまま運用し、収益を分配する形が適しているケースもあります。
3. 遺産分割前に必ず確認すべきポイント
(1)遺産の内容・範囲の確定
まず、どのような財産が遺産に含まれるのか?を正確に把握する必要があります。遺産を管理していた相続人が情報を開示しない場合など、調査に時間を要することもあります。
(2)相続人の確定
相続人は法律で決まっていますが、離婚・再婚などにより家族関係が複雑な場合、誰が相続人なのか分かりにくいこともあります。その場合は、被相続人の出生から死亡までの戸籍を調査します。複雑なケースでは、専門家に依頼することをおすすめします。
(3)遺言書の有無
遺言書がある場合は、原則としてその内容が優先されます。遺言書には、相続分の指定や、特定の財産を特定の相続人に引き継がせる内容が記載されていることがあります。その場合、他の遺産の分け方について調整が必要になることもあります。
(4)生前贈与の有無
生前に特定の相続人が多額の贈与を受けていた場合、他の相続人との公平を図るため、「特別受益の持ち戻し」が問題になることがあります。
(5)寄与分
被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人については、その貢献度に応じて相続分が増える場合があります。介護や事業への協力などが代表例です。
4. 遺産分割の進め方
(1)協議
相続人同士の話し合いで遺産分割がまとまる場合です。専門家が代理人として関与することで、円滑に合意に至るケースも多くあります。
(2)遺産分割調停・審判
話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停でも合意に至らない場合、裁判官が判断を下す「審判」に移行します。
調停や審判では、資料の準備や手続きが複雑になるため、弁護士などの専門家に依頼することで、精神的・実務的な負担を軽減できます。
専門家に相談することの重要性
遺産分割は、法律の知識だけでなく、相続人同士の関係性や感情面にも配慮しながら進める必要がある、非常に繊細な問題です。
財産の内容や相続人の範囲、遺言書の有無、生前贈与や寄与分の有無など、検討すべき事項は多岐にわたるため、ひとつ判断を誤るだけで、話し合いが長期化したり、深刻な対立に発展してしまったりすることもあります。
また、遺産分割調停や審判に進んだ場合には、戸籍や財産資料の収集、主張書面の作成など、専門的かつ煩雑な手続きが求められます。相続人ご本人だけで対応することは、大きな負担となりがちです。
そのため、遺産分割の問題では、できるだけ早い段階で相続に精通した専門家が関与することが、円満かつ適切な解決への近道となります。
遺産分割の問題で、悩まれたら、是非専門家である弁護士にご相談してください。