民事信託にはどんな種類があるの?|福岡の弁護士がやさしく解説

信託は様々な種類があり、種類ごとに分類するとしたら様々な方法があると思います。
ここでは、信託を、委託者(財産を託す人)、受託者(財産を管理・運用する人)、受益者(信託された財産から利益を受ける人)の関係によって、どのように分類することができるか、説明したいと思います。

  1. 受益者との関係による分類
    1_1. 他益信託
    1_2. 自益信託
  2. 受益者のいない信託
    2_1. 目的信託
     2_1_1. 目的信託とは?
     2_1_2. 目的信託の活用例
     2_1_3. 存続期間の制限
    2_2. 公益信託
  3. 当事者が重なる場合の信託
    3_1. 委託者と受益者が同じ場合
    3_2. 委託者と受託者が同じ場合(自己信託)
    3_3. 受託者と受益者が同じ場合
  4. ポイント

1. 受益者との関係による分類

1_1. 他益信託

他益信託とは、財産を託す人(委託者)と財産から利益を受ける人(受益者)が異なる信託です。
例えば、親が自分の財産を信託し、その利益を子どもが受け取る場合などが該当します。

1_2. 自益信託

自益信託とは、委託者と受益者が同一人物である信託です。
例えば、自分の財産の管理を受託者に任せながら、その利益は引き続き自分が受け取る場合がこれに当たります。民事信託ではよく利用される形態です。

2. 受益者のいない信託

通常、信託は受益者の利益のために設定されるものです。しかし、一定の目的を実現するため、受益者を定めない信託も認められています。

2_1. 目的信託

2_1_1. 目的信託とは?

目的信託とは、特定の受益者を定めず、一定の目的を達成するために設定される信託です(信託法258条)。
従来、受益者のいない信託は、公益信託を除いて認められていませんでした。しかし、社会的なニーズの高まりを受け、現行の信託法では目的信託が制度化されています。

2_1_2. 目的信託の活用例

  • 地域住民が資金を出し合い、高齢者支援を行う
  • 子育て支援活動のために資金を管理する
  • 地域の文化活動や環境保全活動を継続的に支援する

このように、特定の個人ではなく、一定の目的の実現を目指す場合に利用されます。

2_1_3. 存続期間の制限

目的信託は、長期間にわたり管理主体が不明確になることを防ぐため、存続期間は20年を超えることができません(信託法259条)。

2_2. 公益信託

公益信託とは、学術、芸術、慈善、祭祀、宗教その他公益のために設定される信託です。
例えば、奨学金事業や文化振興事業、福祉活動などを継続的に行うために活用されます。
公益信託は一般の信託とは異なり、主務官庁の認可を受けて設定されます。また、通常の信託法ではなく、公益信託に関する特別法が適用されます。

公益信託も広い意味では目的信託の一種ですが、目的信託とは異なる特別なルールが定められており、例えば目的信託にある「20年の存続期間制限」は適用されません。

3. 当事者が重なる場合の信託

信託では、委託者・受託者・受益者の3者が別々であることが原則的ですが、同一人物が複数の立場を兼ねることもあります。

3_1. 委託者と受益者が同じ場合

委託者と受益者が同一人物となる信託を「自益信託」といいます。
例えば、親が子に財産管理をしてもらうこと目的として、委託者として自分の財産を受託者である子に託し、かつ受益者として信託財産から利益をうける場合です。

3_2. 委託者と受託者が同じ場合(自己信託)

委託者が自ら受託者となる信託を「自己信託」といいます。
自己信託は信託契約ではなく、委託者による意思表示によって設定される点に特徴があります。
また、信託における強制執行禁止や倒産隔離効(破産の場合の債権者への配当原資となる財産から隔離する機能)を悪用する目的でされる場合も考えらえるので注意が必要です。

3_3. 受託者と受益者が同じ場合

信託制度では、本来、受益者が受託者を監督する役割を担っています。
そのため、受託者が受益権の全部を有する状態が継続すると、受託者を監督する者が存在しなくなり、信託制度の趣旨に反することになります。
そこで、信託法163条2号は、受託者が受益権の全部を固有財産として有する状態が1年以上継続したときには信託が終了すると定めています。

もっとも、受託者が受益者の一人となること自体は禁止されていません。
例えば、受託者が複数いる受益者のうちの一人となる場合や、受益権の一部のみを有する場合は認められています。問題となるのは、受託者が受益権のすべてを保有し、その状態が1年以上続くケースです。

4. ポイント

  • 他益信託:委託者と受益者が異なる信託
  • 自益信託:委託者と受益者が同じ信託
  • 目的信託:受益者を定めず、特定の目的の実現を目指す信託
  • 公益信託:公益活動を目的とする特別な信託
  • 受託者と受益者が同一でも直ちに無効ではない
  • 受託者が受益権の全部を有する状態が1年以上続くと信託は終了する(信託法163条2号)

相続対策や家族信託を検討する際には、どの種類の信託が目的に適しているかを十分に検討することが重要です。信託の設計によって、財産管理の方法や相続後の財産承継の仕組みが大きく変わるため、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。