相続時精算課税制度とは、親や祖父母から子や孫へ財産を贈与するときに選べる特別な税金の制度です。
1. 利用できる人
2. 利用するための手続き
3. 注意点(とても重要)
4. 税金の計算方法
5. 計算の流れ
6. 相続のとき
6_1. 相続時精算課税制度を適用した場合の相続税の計算例
6_2. 贈与税及び相続税額の計算
1. 利用できる人
次の条件を満たす場合に利用できます。
- 贈与する人:60歳以上の父母・祖父母
- 受け取る人:18歳以上の子・孫
2. 利用するための手続き
この制度を使うには、贈与を受けた翌年の2月1日〜3月15日までに届出書の提出が必要です。
3. 注意点(とても重要)
一度この制度を選ぶと、その後はずっとこの制度が適用されます。
暦年課税(毎年110万円まで非課税の制度)には戻れません。
贈与者が複数の場合、それぞれ相続時精算課税を選択するかどうか必要です。
4. 税金の計算方法
相続時精算課税制度では、次の2つの控除が使えます。
- 毎年の基礎控除:110万円
- 一生涯の贈与全体に対する特別控除:通算で2,500万円
5. 計算の流れ
① 1年間(1月1日〜12月31日)の贈与額を合計
② そこから110万円を差し引く
③ さらに、残りから特別控除を差し引きます。ただし、一生涯で差し引くことができるのは2,500万円までで、その金額を超えると差し引けません。
④ 残った金額に税率(20%)をかけて贈与税を計算
6. 相続のとき
相続時精算課税制度を使っていた贈与者が亡くなると、これまでに贈与された財産の価額は相続税の計算に加えられます。
つまり、その場では税金が軽くなる代わりに、最後にまとめて精算する仕組みです。
6_1. 相続時精算課税制度を適用した場合の相続税の計算例
ここでは、夫Hがなくなり、妻Wと子供AとBの3人が相続人だった場合を例に説明します。
(設例)Hは生前1億円の資産を有していました。
【令和6年】
HからAに1610万円の資産を贈与しました。
Aは、相続時精算課税選択届出書を提出しました。
【令和7年】
HからAに1890万円の資産を贈与しました。
【令和8年】
Hが亡くなり、各相続人は以下の通り相続しました。
W:4890万円
A: 143万円
B:1467万円
計:6500万円

6_2. 贈与税及び相続税額の計算
【令和6年】

《課税対象額》
贈与額(1610万円)-基礎控除(110万円)=1500万円
《特別控除適用後の課税対象額》
課税対象額 1500万円-特別控除(1500万円)=0円
《特別控除残額》
2500万円-1500万円=1000万円
- 相続時精算課税制度を利用すると、暦年で毎年110万円までの基礎控除と累計で2500万円までの特別控除があります。
- 相続時精算課税選択届出書を提出すると、その後の贈与は全て適用対象となり、暦年課税に戻すことはできません。
- 特別控除は、贈与時に控除はできますが、相続時には、相続時精算課税の適用を受けた資産を課税対象額に加算しないといけません。
【令和7年】

《課税対象額》
贈与額(1890万円)-基礎控除(110万円)=1780万円
《特別控除適用後の課税対象額》
課税対象額(1780万円)-特別控除(1000万円)=780万円
《贈与税額》
780万円×20%=156万円
- 相続時精算課税制度を利用すると、贈与税は、特別控除額を超えた課税対象額に対して一律20%で計算されます。
なお、暦年課税の場合の税率は、下記サイトを参照ください。
国税庁ホームページ タックスアンサー(よくある税の質問)『No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)』
【令和8年】相続税の総額の計算

《課税対象額》
遺産(6500万円)+贈与資産(3280万円)=9780万円
- 贈与資産:2年間の贈与税課税対象額計
1500万円+1780万円=3280万円 - 基礎控除額:3000万円+600万円×法定相続人数(3人)=4800万円
- 基礎控除後の課税対象額:9780万円-4800万円=4980万円
《相続税の総額》
・各人の法定相続額
妻W :2490万円
子供A:1245万円
子供B:1245万円
・各人の法定相続額に対する相続税額
妻W :2490万円×15%-50万円=323.5万円
子供A:1245万円×15%-50万円=136.75万円
子供B:1245万円×15%-50万円=136.75万円
(総額:597万円)
※税率については以下のサイト参照。
国税庁ホームページ タックスアンサー(よくある税の質問)『No.4155 相続税の税率』
《各人の相続負担割合》
課税対象額 9780万円
妻W :4890万円÷9780万円=50%
子供A:(143万円+3280万円)÷9780万円=35%
子供B:1467万円÷9780万円=15%
《各人の相続税額》
妻W:597万円×50%=298.5万円
ただし、配偶者には配偶者特別控除が以下のいずれか多い金額まで認められるため、税額は発生しません。
① 1億6000万円
② 配偶者の法定相続分相当額
子供A:597万円×35%-156万円=52.95万円
※令和7年の贈与税は控除されます。
子供B:597万円×15%=89.55万円
なお、相続時精算課税を適用することにはメリット・デメリットがありますので、ご留意ください。
この記事は、税理士法人TMアカウンティングの監修のもとに作成されております。