相続した土地を放棄できるか?|こんな土地は放棄できない!|相続と地国家帰属法

相続と地国家帰属法を使って、相続した土地の放棄をしたいと思っても、法律上、それができないとされる土地があります。
今回は「どんな土地は放棄できないのか」について、ご説明します。

『一 問答無用で、相続土地国家帰属法の利用(相続した土地の放棄)ができない土地
法律では、以下の場合は、相続土地国家帰属法の利用(相続した土地の放棄)ができない(相続した土地の放棄ができない)としています(2条3項)。』

つまり、問答無用で、土地の放棄の制度は利用できません。

1. 建物がある土地
2. 貸している土地、担保権(抵当権など)を付けている土地
3. 他人による通路などによる使用が予定されている土地
4. 特定有害物質で汚染されている土地
5. 境界が明らかでない土地、所有権に争いがある土地

『二 審査のうえ、相続土地国家帰属法の利用(相続した土地の放棄)ができない可能性がある土地。』

以下の土地は、問答無用で利用できないというわけではなく、審査があり、その結果国庫帰属が不承認(相続した土地の放棄ができない)となる可能性があります。

1. 崖がある土地
2. 土地の通常の利用を邪魔するモノが地上にある場合
3. 除去しないといけないものが地下にある場合
4. 争いをしないと土地の通常の管理処分ができない場合
5. 上記以外で、土地の管理、処分に過大な費用等が発生する場合

詳しくは以下をご覧ください。

『一 問答無用で、相続土地国家帰属法の利用(相続した土地の放棄)ができない(相続した土地の放棄ができない)土地』とは

1. 建物がある土地

一般的に、建物は土地より管理コストがかかります。そして、建物は最終的に老朽化したら取り壊さねばならず、費用が掛かります。このような費用を国(つまりは税金)で負担するのは相当でないので、相続土地国家帰属法の利用(相続した土地の放棄)ができません。

2. 貸している土地、担保権(抵当権など)を付けている土地

貸している土地を国に帰属させると、国が賃料の回収の管理をしなければならず、それなりの人件費等がかかります。しかし、このような費用を国(つまりは、税金)で負担するのは相当ではありません。また、抵当権などの担保がついている土地は、担保権を実行されて競売にかかり、土地が国のものでなくなる恐れがあります。こういった土地は相続土地国家帰属法の利用(相続した土地の放棄)ができません。

3. 通路などによる使用が予定されている土地

例えば、隣地所有者が公道へ出るための通路として利用している場合、このような土地を国に帰属させると、国が利用者との調整等の負担を負うことになるので、こういった土地は相続土地国家帰属法の利用(土地の放棄)ができません。
政令2条では、通路のほか、墓地、境内地、水道用地、用悪水路又はため池として利用されている土地は、国庫への帰属(土地の放棄)ができません。

4. 特定有害物質で汚染されている土地

このような土地は、汚染の除去のために多額のお金がかかり、このような費用を国(つまり税金)で負担するのは相当でないので、相続土地国家帰属法の利用(相続した土地の放棄)ができません。

5. 境界が明らかでない土地、所有権に争いがある土地

こういった土地は、他にその土地の所有権を主張するものとの間で、争い(交渉や裁判など)をする必要があったり、隣地所有者と境界線の確定で争い(交渉や裁判など)をする必要があったりします。その結果、国に過大な負担や費用が掛かり、それを税金で賄うのは相当ではないので、相続土地国家帰属法の利用(相続した土地の放棄)ができません。

『二 審査のうえ、相続土地国家帰属法の利用(相続した土地の放棄)ができない可能性がある土地』とは

1. 崖がある土地

崖がある土地は、場合によっては、がけ崩れによる自分の土地や隣地への損害を防ぐために補強工事をしないといけない場合があります。そのため、管理に過大な費用が掛かる場合もあります。崖といっても、その高さや角度で危険度が違うので、場合によっては国庫帰属が認められません。

2. 土地の通常の利用を邪魔するモノが地上にある場合

工作物、車両、樹木など、土地の利用を邪魔するものがあると、その除去のために可分な費用が掛かる場合があります。このような費用を国(つまりは税金)で負担するのは相当でないので、相続土地国家帰属法の利用(相続した土地の放棄)ができない場合があります。しかし、森林の場合、樹木があるのは当たり前ですし、モノによっては、その除去にそんなに費用が掛からないこともあるので、審査によっては、国庫帰属(相続した土地の放棄)が承認されたり、されなかったりします。

3. 除去しないといけないものが地下にある場合

地下に埋設物がある場合、埋設物の除去に過大な費用が掛かる恐れがあり、このような費用を国(つまりは税金)で負担するのは相当でないので、こういった土地は相続土地国家帰属法の利用(相続した土地の放棄)ができないことがあります。しかし、埋設物といっても様々ななものがあり、土地の隅っこのほうに隣地所有者が利用している配管がある程度であれば大きな支障がないので、土地の国庫帰属は利用できる場合もあります。したがって、審査のうえ、その可否が判断されます。

4. 争いをしないと土地の通常の管理処分ができない場合

例えば、不法占拠者がいる場合などは、争いをしたうえでないと、通常の土地の管理や処分ができません。こういった土地も、承認か不承認かの審査の対象になります。
具体的には、政令4条2項で、以下の土地が承認か不承認か、の審査の対象になります。

①土地が隣地等に囲まれ、公道に出られない土地
②所有権に基づく使用又は収益が現に(不法占拠等により)妨害されている土地

5. 上記以外で、土地の管理、処分に過大な費用等が発生する場合

これは、具体的には政令4条3項で、以下の土地が承認か不承認か、の審査の対象になります。

①土砂の崩壊等で災害が発生又はそのおそれがあり、被害防止が必要なもの(軽微なものを除く)
②鳥獣、病害虫等が生息し、人、農産物又は樹木に被害が生じ、又は生ずるおそれがある土地(その程度が軽微な場合を除く)
③追加的に造林、間伐又は保育を実施する必要がある森林
④その他、余分な金銭負担が生じる土地

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