ある日、亡父のこどもが現れた

亡くなったお父様Aさんの遺品を整理していた娘のBさんは、父の通帳から、毎月、決まった金額がCという人に振り込まれているのに気づきました。Cさんという名前は、母にも心当たりがなく、借金でもあるのではと心配になり、Cさんの居所をつかんで、会ったところ、Cさんは、「自分は、Aが結婚する前にお付き合いしていた女性Dさんとの間に生まれた子どもで、Aは隠れて仕送りを続けていた。」と言われました。父の遺産の相続は、どうなるのでしょうか

一般的に、お父さんがなくなった場合、遺産分割は、配偶者であるお母さんと子供たち、お母さんが他界されていれば、子どもたちの間で行われます。いちいち戸籍を取り寄せてまで調べなくても、相続人が誰かは、自ずとわかっていることが多いでしょう。

しかし、お父さんが、Bさんの例のように結婚前に別の女性との間に、あるいは、結婚後に浮気などの理由で、家庭の外に子供を作っている場合もないとは限りません。このような場合、その事実を配偶者や、子どもさんたちが知らされていない場合も多いと思います。

ある日、突然、亡父のこどもと名乗る人が現れたといった場合はもちろん、そうでない場合も相続人を確定するためには、亡くなったお父さんが生れてから亡くなるまでの戸籍をすべて取寄せて、お父さんの子供が他にいないか、念のため、調べた方がいいでしょう。

結婚している父母との間の子供は、生まれてすぐに、父母の戸籍に入ります(戸籍法18条1項)。

しかし、父母が離婚した場合、子供は、父の苗字を名乗る場合は父の、母の苗字を名乗る場合は母の戸籍に入ります(戸籍法18条2項)。また、子供は結婚すれば、別の戸籍に移ります(戸籍法16条)。結婚しなくても、子供ができて、その子供が同じ苗字の場合は、父母の戸籍から出て、子供とその子供の戸籍が編成されます(戸籍法17条、シングルマザー、シングルファーザーの場合)。

よって、子供をもれなく調べるには、父が生まれてから死亡するまでの全ての戸籍をとった方がいいですし、それで、大体すべての子供の調査はできます。

しかし、Aさんのように、結婚していない女性との間で子供さんが生まれた場合、その子供さんがAさんの苗字を名乗れば別ですが、その子供さんの母親であるDさんの苗字を名乗った場合、Dさんの戸籍に入ります(戸籍法18条2項)。つまり、このケースにおいては、亡父の子であっても、亡父の戸籍には入りません。しかし、Cさんについて、Aさんが認知をすれば、認知をした記述がAさんの戸籍上に記載されます。従って、認知をしたという記述がないか、きっちり戸籍を見れば、Aさんの子供は、ほぼすべて調査ができます。

仮にAさんの戸籍にCさんを認知したという記述がなければ(あるいは、Cさんの戸籍にAさんが父として記載されていなければ)、いくらCさんが、Aさんの子であると主張しても、戸籍上はAさんの子供ではないので、その人を相続人として扱う必要はありません。

ただし、その子供は、父の死亡から3年間は裁判所に認知の訴え(民法789条)を起こせるので、現時点で認知になってなくても、その後認知が認められ、相続人になる可能性があります。Aさんの死亡後、Cさんが認知の訴えをして、それが認められた場合、Cさんは、Cさんが生まれた時にさかのぼってAさんの子供ということになります(民法784条)。

家庭裁判所でCさんの認知が認められた時点で、遺産分割がまだ終わっていなければ、Cさんは相続人として、遺産分割協議に加われますし、Bさんとしては、これを無視できません。

また、Cさんの認知が認められた時にすでに遺産分割協議が終わっていた場合は、民法910条に決まりがあり、Cさん以外の相続人は、Cさんに、Cさんの法定相続分に相当する金額を払わないといけません。

では、逆に、Aさんが、Cさんを認知していた場合、Bさんとしてはどうすることもできないのか?CさんがAさんの子であることが真実であるか、疑わしい場合に、Bさんは、このまま放っておいては自分の相続分が減ってしまいます。そのような場合、Bさんは、家庭裁判所に、認知無効の訴え(民法786条)を起こせます。それで、CさんがAさんの子でないことがわかると、認知は無効になり、Cさんは、戸籍上Aさんの子でなくなり、相続もできなくなります。

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