亡くなった親に借金があるかも

大手の商社を定年後の父は、趣味のゴルフや、年に数回の海外旅行を楽しむなど、優雅な老後を過ごしていた。そんな父が亡くなり、忌明けも終わったので、遺品を整理に来たAさんは、父の家の郵便受けから、信販会社やクレジット業者の請求書を見つけた。父の書斎を調べると、他にも銀行からの借り入れなど、ざっと見ただけでかなりの金額になる。

何のための借金だったのか、他にもあるのか見当もつかない。

父の財産は、自宅と有価証券類。現金も多少は持っていたはずなので、Aさんは、弟Bさんと半分ずつ相続するつもりだったが、初めて知った父の多額の借金で、どうしたらよいのかわからなくなった。

人として生き、生活していれば、どなたの場合でも、その方が亡くなると、必然的に残る借金があります。固定資産税や、病院代などがその例で、これは亡くなった方が定期的に支払っていれば、それほど多額ではありませんので、あまり問題になることはありませんし、調べようと思えば、病院なり、市区町村の固定資産税課に尋ねればすぐわかることです。

問題になるのは、Aさんのケースのように、親の遺品を整理しているときに、クレジットカードの明細や請求書類がひょっこり出てきたり、あるいは、亡くなった後に、借入先から請求書が届くなどして、初めて「借金があるかも?」と周りが気づいたというケースです。

”相続放棄”をすれば、借金を引き継ぐことはありませんが、もちろん財産も引き継ぐことは出来ません。Aさんのように、亡くなった方に持ち家などの財産がある場合は、どちらが”得”になるのか悩ましいところとなり、簡単に相続放棄を選べないケースもあるでしょう。

そのような場合は、とりあえず、借金の総額を調べて、財産より多いか少ないか、または同額くらいかといった、大体のところを把握することが大事です。

とりあえず、Aさんがやるべきことは、親御さんの家中を捜索して、借金に関係ありそうな請求書、領収証、カードローン利用控えなどの書類や、クレジットカード類を全部探し出すことです。また、通帳もすべてチェックしてください。通帳には、返済のための支払記録が残っている場合があるので、それらを一つひとつ拾っていくことです。

そして、探し出した借入先かもしれない業者に対して、”相続人”の立場で、「現在借金が残っているか、残っているなら、いくら残っているのか」を問い合わせる手紙を送ります。ちなみに、この通知は、弁護士に依頼して、送ってもらうことも可能です。大手の借入先であれば、大抵の場合、返答が来ますので、それにより、借金総額をおおよそ把握することが出来ます。

また、信用情報機関に問い合わせをすることもできます。信用情報機関には、主に銀行系の全国銀行協会、クレジット・信販系のCIC,消費者金融系のJICCの3つがあり、個人が、ローンやクレジットなどの契約をした場合、契約や申し込みに関する個人情報が、これらの信用情報機関に登録されます。

通常は、借りた本人しか情報の開示請求ができませんが、本人が死亡している場合は、法定相続人が、これら3つの信用情報機関に、故人の信用情報の開示請求をすることができますので、開示された信用情報に載っている借入先にもすべて、借金の有無と、残額を問い合わせる手紙を送りましょう。

信用情報機関に記載漏れ(通知漏れといった人的ミスで載らない恐れも皆無ではありません)があったり、個人から借りているといった、特定の場合を除き、上記の方法で手を尽くせば、おおかたの借金は洗い出せると思います。

Aさんの場合は、弁護士に調査を依頼し、大まかな借金の総額がわかりましたので、相続する自宅等の価値と、借金の額を考慮して、相続するか放棄するかを選ぶことになります。多寡が明らかな場合の判断は簡単ですが、微妙な場合は、難しい判断になります。

また、相続放棄は、亡くなってから3か月以内にしないといけないので、これらの調査も3か月以内にしないといけませんが、時間が足りないよ、という場合は、この期間を延ばすように裁判所に申請ができます。

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