疎遠な兄弟姉妹が成年後見の選任など、特定の親族が成年後見人になることに反対の場合はどうなるでしょうか?
1 成年後見自体に反対
まず、成年後見人申立ては、いったん申し立てると、成年被後見人(ご本人)の権利をきちんと守るには、成年被後見人をつけてきっちり財産管理や身上監護をすべきだと考えられています。そのため、申し立てた人とはいえ、勝手に取り下げることができません。
したがって、ご本人に本当に判断能力がない場合、成年後見人は選任されることになります。
では、ご本人の推定相続人(仮にご本人が亡くなったら相続人になる人)のうち、一人が成年後見人をつけること自体に反対したらどうなるでしょうか?
基本的には、裁判所は「成年後見人をつけるべき事案かどうか」「ご本人に判断能力がないか」を慎重に調査すると思います。
つまり、ご本人の推定相続人全員が成年後見人をつけることに賛成であれば、比較的簡易に成年後見人選任手続きを進めます。
具体的には、医師の「判断能力はない」との診断書が申立人から提出されており、特にそれが疑わしいという事情(ご本人が若すぎる場合など)がなければ、それだけで、成年後見人選任に進んでいくことが多いと思われます。
しかし、ご本人の推定相続人の中で一人でも成年後見人をつけることに反対していれば、本当にご本人の判断能力がないのか?について、裁判所も慎重に判断せざるを得ないので、鑑定を命じることになると思います。
鑑定をすると医師が鑑定書を書きますが、鑑定書は(診断書と違って)本人の判断能力の有無について、もっと詳しい調査結果の記載がされます。鑑定の結果、ご本人に判断能力がないと判断されれば、ご本人の推定相続人が反対していても(ご本人の権利を守るために必要なことですから)成年後見人は選任されます。
ただし、わざわざ鑑定をすることになるため、鑑定費用を申立人が払わないといけなくなりますし、鑑定にかかる時間だけ、成年後見人の選任が遅れます。
2 特定の親族が成年後見人になることに反対
ご本人の推定相続人の一人が、特定の親族が成年後見人になることに反対している場合、親族間で何らかの争いがある可能性があります。
そういった場合、特定の親族が成年後見人になると、何かとうまくいかないことが出てくる恐れもあります。
したがって、成年後見人を親族とはせずに、弁護士等の専門家になってもらうということになる可能性があります。
成年後見人の選任権は裁判所にあるので、そのあたりは、ケースバイケースです。裁判官が、それでも特定の親族が成年後見人になるのが望ましいと思えばそうしますし、争いが起きそうなのでやめておいたほうがいいと思えば、弁護士等の第三者を成年後見人に選びます。
こればかりはケースバイケースなので、一概に言えることではありません。
したがって、反対者がいるからといって、絶対に親族が成年後見人になることはないとは言えません。