行方不明の兄弟がいて相続が進められない

相談者A美さん。両親と3人で暮らしていたが、父が他界。

実はA美さんには、B介さんという兄がいるが、芸人になりたがったB介さんは、反対した父と大喧嘩の末17歳で家出し、現在まで、どこにいるのか、音沙汰もない。遺産分割協議を進めるために、A美さんはB介さんの住所を調査したが、住民票上の住所には住んでおらず、消息がまったくわからない。

疎遠なきょうだいなど、相続人の連絡先がわからない場合でも、遺産分割協議には相続人全員の合意が必要で、そのための住所の調査の手段があることは別の記事で説明したとおりです(「疎遠なきょうだいがどこにいるか分からない」の記事をお読みください)。居所がつかめて、連絡がつけばよいのですが、戸籍上生存していることがわかり、戸籍の附票や住民票を取ったけれど、そこには住んでいない、ということもあります。この場合は、単に”疎遠”のレベルではなく、”行方不明”ということになります。

もちろん、このような相続人が行方不明の場合でも、遺産を分ける手続きの進め方はありますが、まずは、本当に行方不明と断定していいのか、きっちり調査をすることをおすすめします。例えば、B介さんの場合、結婚している(あるいはかつて結婚していた)場合は、奥さん(元奥さん)に、また子供がいる場合は、子供に居所を尋ねます。住民票上の最後の住所のアパートの大家、あるいはご近所さんに引っ越し先は知らないか尋ねたり、勤務先がわかれば、まだ働いているかどうかわからなくても、とにかく連絡してみることです。もし、勤務先が判明すれば、遺産分割調停は、勤務先に送達することができます。最終的には、警察に捜索願を出してもいいでしょう。

このように、四方八方手を尽くしたけれど、どこにいるかわからない場合は、行方不明として、B介さんは、いないままで相続手続きを進めます。

具体的には、裁判所に、不在者財産管理人(民法25条~29条)という人を付けてもらいます。裁判所が適切な弁護士を選んで付けてくれます。遺産分割協議は、この不在者財産管理人が、行方不明のB介さんの代わりになり、話し合いを進めます。行方不明とはいえ、B介さんに不利な内容の遺産分割協議をすることはできませんので、B介さんにもきっちり法律で決まった割合を分ける内容の遺産分割協議をします。

不在者財産管理人は、裁判所の許可を得たうえ(民法28条、103条)、その内容で、遺産分割協議を行います。

不在者管理人には報酬を支払う必要がありますが、その金額は家庭裁判所が決定し、B介さんに分けた財産から支払うことができます(民法29条)。

こうすれば、遺産分割協議は成立したことになり、実際に財産を分けるための預貯金の解約や、不動産の登記が可能となります。

また、仮にB介さんが、行方不明になって、かなりの期間が経っている(法律上の決まりは7年)場合は、失踪宣告(民法30条~32条)を裁判所に申し立てるという方法もあります。この場合は、亡くなったものと同様になりますので、不在者管理人を選ぶのではなく、B介さんに子供がいればその子供(甥、姪)(仮に奥さんがいれば奥さんも)を相手に話し合いをして、奥さんも子供もいなければ、B介さんは抜きで、残った相続人で、遺産を分けることになります。

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