愛人のお子さんの相続分

料亭を経営していたS子さんの父は、今から20年以上前、平成12年に亡くなった。人気の店でそこそこの資産もあった父には、いわゆる愛人関係の女性が複数おり、父の死後には、愛人の子(A夫さん)の存在も発覚して、遺産分割ではかなり揉めたが、父が認知していたことからA夫さんには、法定相続分としてS子さんの半分の額を遺産として支払うことで解決できたと思っていた。

ところが、最近になって、再びそのA夫さんから連絡があり、「以前私がもらった遺産は、S子さんの半分だったが、今は法律が変わって、自分もS子さんと同じ額がもらえるはずだ。残りの遺産をもらいたい」とのことだった。当時、父の遺産総額は約3000万円だったので、S子さんが2000万円を引継ぎ、A夫さんには1000万円を渡した。もう20年も経っているのに、あと500万円をA夫さんに支払わなければならないのか。

S子さんの場合のように、お父さんが浮気をして、外に子供を作っていた場合、いわゆる非嫡出子(婚外子)も当然相続人です。相続の話し合いは、相続人全員の合意がないと成立しませんので、話し合いにも入ってもらう必要があります。

S子さんのお父様が亡くなられた平成12年頃の民法では、非嫡出子(結婚していない男女との間のこども)の法定相続分(当事者通しで話し合いがつかない場合、この割合で分けなさいと法律が決めている割合)は、嫡出子(結婚している男女のこども)の半分であるという決まり(900条4号但書)がありました。

従って、お父さんとお母さんのこどもであるS子さんと、愛人のお子さんであるA夫さんの場合、S子さんのお母さんはすでに亡くなっていましたので、S子さんが3分の2、A夫さんは3分の1が法定相続分でした。

しかし、平成25年9月4日、それまで、上記の決まりを合憲としていた最高裁判所が判断を覆し、憲法違反であるとの決定を出しました。“法の下の平等を求めた憲法14条に違反する”ということが理由です。

現在の相続法が戦後まもなく改正された昭和22年と、現在とでは、社会状況や国際的な立法の状況(欧米諸国で、婚外子の法定相続分を少なくしている国は欧米諸国にはないようです)ことを踏まえた判断です。

この決定により、民法は改正され、現在では、非嫡出子(愛人のお子さん)も、同じ割合の相続の権利があります。

ただし、この決定で、最高裁は、混乱を避けるため、異例のことですが、すでに終わっている遺産分割には影響を及ぼさない、つまり、すでに遺産を分け終わっている場合は、愛人のお子さんが、自分の相続分はもっと多いという主張をしても、すでに合意した遺産分割協議の効果を覆すことはできない、ということについて言及しています。

S子さんの場合は、新法が成立する前に遺産分割協議が終了していますので、A夫さんと争うことはないと思われます。

もちろん、遺言書で法定相続分と違った分け方を指定することもできますし、遺産分割協議は、全員が合意すれば、必ずしも法定相続分通りにしなくてもよいというのは他の事例と同じです。 新法の適用の時期や、詳細については事案により違いがありますので、ぜひ専門家である弁護士にご相談ください。

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