配偶者居住権の終了
相談者Wさんは、配偶者居住権を得て、亡き夫Hさんの遺産である建物に住んでいる。年を重ね、一人暮らしも不安なことから、老人ホームに入所することとなり、建物を出ることになったので、配偶者居住権…
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相続の改正法が令和元年7月1日に施行されました。
相続法は昭和55年に改正されて以降、改正がなかったので、約40年ぶりの大改正です。
この間、日本は高齢化が進みました。
令和元年の福岡県の平均寿命は、男性81.22歳(全国平均は81.41歳)、女性は87.43歳(全国平均は、87.45歳)です。昭和55年の福岡県の平均寿命は男性72.99歳(全国平均は、73.57歳)、女性79.21歳(全国平均は79.00歳)ですから、昭和55年と令和元年を比べると、約40年の間に福岡県の平均寿命は男性で、8.23歳、女性で8.22歳延びています。
その結果、夫または妻に先立たれた場合の残された配偶者の年齢は、40年前に比べてだいぶ高くなり、また先立たれた後の人生も長いものとなりました。このため、相続制度において、残された配偶者の保護を厚くする必要性ができました。
逆に少子化が進みました。
令和元年の福岡県の合計特殊出生率は 1.44(全国平均は1.36)でした。昭和55年の福岡県の合計特殊出生率は1.74(全国平均は1.75)なので、40年で子供の数がかなり減っているということです。
その結果、子供一人当たりの相続分は、以前より増え(例えば子供が3人の場合に比べ、子供が2人の場合のほうが、子供一人当たりの取り分が増えるということです。)、相続制度において、子供の保護を厚くする必要性は減ったといえます。
このため、令和元年7月に施行された新相続法では、残された配偶者の保護を厚くするいくつかの制度が、作られました。
残された配偶者の住居を保護する配偶者居住権、短期配偶者居住権、居住用不動産を配偶者に生前贈与又は遺言による贈与(遺贈)をしていた場合に配偶者を優遇する制度などです。
ちなみに昭和55年改正も、配偶者の保護を厚くする制度でした。
具体的には、相続人が配偶者以外にいた場合の配偶者の相続分をそれまでより増やしたのです。配偶者と子供の場合、配偶者相続分は3分の1から2分の1へ、配偶者と親の場合、配偶者の相続分は2分の1から3分の2へ、配偶者と兄弟姉妹の場合、3分の2から4分の3へ増えました。また、昭和55年の改正前は、兄弟姉妹の子(甥姪)が亡くなっていた場合、甥姪の子供にも相続分がありましたが、昭和55年の改正により、相続権は甥姪までで、甥姪が亡くなっていた場合に甥姪の子には相続権はないことになりました。
このように、相続法では、令和元年度の改正に限らず、年の経過に伴い、子供、あるいは、親、兄弟姉妹、甥姪など他の相続人より、配偶者を優遇する方向で、改正が進んでいるといえます。
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