Y子さんに、ある日突然、東京の法律事務所から書類が届いた。
Y子さんの父方のいとこであるM美さんからの依頼で、M美の母、つまりY子さんの父の姉であるJ子さんの負債約300万円に関する相続放棄の手続きを進めているが、第1順位の相続人であるM美が相続放棄すると、第2順位のJ子の親(Y子さん、M美さんの祖父母)はすでに死亡しているため、Y子さんの父が第3順位となる。
Y子さんの父(J子さんの弟)はすでに死去しているので、Y子さんが相続人となるが、相続放棄することも可能なので、連絡して欲しいという内容だった。
Y子さんとしては、いとこのM美さんとも、叔母のJ子さんとも50年近く会ったこともなく、何をしているのか、どこに住んでいるのか連絡先も知らない。ほぼ他人同然の叔母の借金のことなど知る由もなく、寝耳に水の話で驚いている。そもそも、この話は本当の事なのか、何かの詐欺ではないのか心配でどうしたらよいかわからない。
自分のきょうだい、あるいは、叔父さん叔母さんが、借金を残して亡くなった、という話を聞いたら、注意が必要です
仮に借金を残して亡くなった親の子供が相続放棄をすると、次順位(第三順位)の相続人に、お鉢が回ってきてしまいます。つまり、子供たちが全員相続放棄すると、(親の親つまり祖父母が(第二順位)ご健在であれば祖父母ですが、亡くなっていると)、親のきょうだい、または、きょうだいがなくなっている場合はその子供が相続人(第三順位)となります。
借金を残して亡くなった人の夫か妻が生きていれば、借金の半分は残された夫または妻が引き継ぎ、兄弟やきょうだいの子(おい、めい)はその半分を引き継ぎます。しかし、仮に、離婚していた、すでに亡くなっていた、残された夫・妻も相続放棄した、となると、借金全額がきょうだい、きょうだいの子に引き継がれてしまいます。
それで、これらの第三順位の人たちも相続放棄をした方が賢明といえます。
Y子さんの場合も、Yさんの父のきょうだいであるJ子さんの負債は、J子さんの子であるM美さんが相続放棄したことにより、Y子さんに引き継がれることになりますので、当然、相続放棄をすることになりました。
一方、借金を残して亡くなった人の子供たちサイドから考えると、親のきょうだいまたはきょうだいのこどもに、「自分たちが相続放棄したよ」ということを教えたほうが親切なのか、むしろ教えない方がいいのかは、微妙な問題といえます。
なぜなら、先順位者の相続放棄を知らずにいれば、相続放棄を知った日から3か月間は相続放棄ができる、つまり、相続放棄できる期間が先延ばしになるからです。もし、親のきょうだいまたはきょうだいのこどもに教えてしまうと、教えられた側は、3か月以内に相続放棄の手続きをしないと、放棄できないことになってしまい、借金を払う羽目になるので、恨みを買いかねません。
よって、借金を残して亡くなった人の子供たちが相続放棄したことを親のきょうだいや兄弟のこども(つまり、いとこ)に教える場合は、それらの人も相続放棄をさせるということをセットにして教えた方が望ましい対応といえます。無用なトラブルを避けるためにも、相続手続きについて不安がある場合は 専門家である弁護士にご相談ください。