疎遠な兄弟姉妹-7-不在者財産管理人④申し立てに必要な書類、準備事項

行方不明の兄弟姉妹がいて、遺産分割協議をするために不在者財産管理人選任の申立をする場合、どんな準備が必要でしょうか。
どんな準備が必要かという点は、どんな書類を出さないといけないか、という観点から考えればいいと思います。

必要書類は、どこの家庭裁判所かにより若干違いがあり、例えば、福岡家庭裁判所と東京家庭裁判所でも少し違うかもしれません。しかし、おおむね以下の書類が必要です。

(1)身分関係の書類として以下の書類が必要です。
・行方不明の兄弟姉妹の戸籍謄本
・行方不明の兄弟姉妹の戸籍謄本の附票(附票にはその人の住所が書いてあります)
・親族(ただし、相続人以外の親族)に財産管理人を依頼する場合、財産管理人候補者の住民票

(2)その兄弟姉妹が行方不明であることを証明する資料が必要です。
具体的には、例えば、行方不明の兄弟姉妹の捜索願を出していた場合は、警察署長の発行する捜索願届け出受理証明書などです。
また、行方不明の兄弟姉妹の最後の住民票があったところに、郵便を出して、本人がそこに住んでいないと「宛所訪ね当たらず」として郵便物が返ってきますが、その戻ってきた郵便物などです。
不在者財産管理人選任の要件は、行方不明の兄弟姉妹が「帰ってくる見込みがないこと」です。そのため「家出する」「探さないでください」などといった書き置きなども証拠になると思います。

(3)不在者財産管理人の仕事は、不在者の財産を管理することですから、当然ながら、不在者の財産に関する資料(不動産全部事項証明書、預貯金通帳の写し)などが必要です。

不在者財産管理人の制度は、申し立てる側の目的が遺産分割協議であっても、不在者財産管理人制度自体の目的は、あくまで不在者の財産管理であり、遺産分割協議はその財産管理の一部に過ぎないのです。このように、申し立てる側の動機と制度そのものの目的が、少しずれることが多い点が、不在者財産管理人制度の特徴です。

(4)不在者財産管理人選任の目的が、遺産分割協議にある場合は以下の書類も必要です。

・被相続人(ご両親)の出生時から死亡までの継続した全戸籍謄本
・相続人(兄弟姉妹)全員の戸籍謄本
・相続関係説明図

必要な書類は上記のようなものです。(1)身分関係の書類、(4)不在者財産管理人選任の目的が遺産分割協議にある場合は、住民票、戸籍謄本、戸籍の附票などなので、市町村役場に申請して取ればいいです。

これに対して、(2)兄弟姉妹が行方不明であることを証明する資料については、結局、不在者が、住んでいたところを去って、帰ってくる見込みがなくなった経緯を調べないといけないということにつながります。(3)不在者の財産に関する資料(不動産全部事項証明書、預貯金通帳の写し)などについては、不在者の財産を調べないといけないということにつながります。

つまり、不在者財産管理人選任の申し立てには、不在者が住んでいたところを去って帰ってくる見込みがなくなった経緯、および不在者の財産を調べないといけないということです。

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