遺産をあげたくない子供、親不孝の子供(廃除の申立)

O川さん夫婦には、長男Aさん、次男Bさんと、長女Cさんがいるが、

次男Bさんに遺産を渡さない方法はないか相談したいとのこと。

Bは若いころからトラブルメーカーで、警察のお世話になったこともある。長女のCさんはそのせいで就職がダメになったばかりか、今でもいきなり家に戻ってきてはお金の無心をされ、断ると家の中で暴れる始末。

自分たちの育て方が悪かったせいかもしれないが、Bのせいで家族は苦労続き。これ以上、Bと関わりたくないし、自分たち夫婦の遺産は一切Bに渡さず、迷惑をかけられ続けた長男と長女に渡したいが、どうすればよいでしょうか?

子供には、法定相続人として、遺産を引き継ぐ権利があります。

法律には、親不孝の子供の法定相続分を減らす規定はありませんので、どんなに親不孝でも、不肖の子であろうと法定相続分きっちりもらえます。

ですが、遺言書で、「親不孝の子供には一銭も上げない」といった内容にすることは可能です。遺言の内容は、遺言者の自由ですから。

とはいえ、いかに遺言書で「一銭も渡さない」としても、子供であれば、” 遺留分”というものが存在します。遺留分は、本来の相続分の2分の1です。

O川さん夫婦には、3人きょうだいですから、法定相続分が3分の1であれば、親不孝の息子Bさんは、最低6分の1の請求をすることが出来るのです。

その、6分の1さえも渡したくない場合、どうするか?です。

最後に残された方法は、廃除(892条~895条)です。被相続人(親)は、親不孝の子供を排除するように家庭裁判所に申立ができます。

廃除を家庭裁判所に申し立てる方法は、生前に本人(親)が申し立てる場合と、遺言において廃除すると書いておく方法があります。前者は自分で申し立てますが、遺言で排除した場合は、亡くなられた後遺言執行者が排除の申し立てを家庭裁判所に行います。

家庭裁判所が排除を認めれば、その相続人は相続人ではなくなります。そうなると、親不孝の子供は文字通り、一銭ももらうことは出来なくなります。

しかしながら、家庭裁判所が廃除を認める確率は、かなり低いといえます。

廃除が認められるには、

① 排除に当たる事実が実際にあったことを証明すること

② ①で証明した事実が、廃除しなければならないほどひどいこと

の2点が必要です。

法律に書いてある、廃除が認められる事由としては、「被相続人への虐待、重大な侮辱、廃除したい相続人の著しい非行」があります。

O川さん夫婦の場合もそうですが、被相続人への虐待、重大な侮辱が主な廃除事由で、これらの事項が、すべて家庭内で行われていた場合、それを証明するのはかなり難しいでしょう。虐待や侮辱の事実は、証拠には残りにくいものです。特に、遺言による廃除の場合は、遺言者が亡くなってから申し立てるので、証拠としては、遺言者が排除の具体的な理由を遺言書に書いていれば、遺言書自体が証拠となりますが、肝心のご本人の証言は、すでに亡くなっているためできません。一方、排除されそうな子供のほうは、そんなことはしていないと家庭裁判所に言うでしょう。この構図からしても、廃除は認められにくいといえます。

それで、例えば、被相続人への虐待を排除事由としたい場合、警察に再三被害届を出しておく、といったことが必要です。

また、相続人の著しい非行も排除できる理由となっていますが、こちらのほうは、何回も罪を犯して、警察の厄介になっていれば、証明もさほど難しくないでしょう。

繰り返しになりますが、とにかく、廃除を家庭裁判所が認めるのは、かなり難しいので、

① なるべく、被相続人が自分で家庭裁判所において証言できるよう、生前に廃除の申し立てをすること

② 虐待を受けたら、まめに警察に被害届を出すなどして、証拠をこまめにとっておくこと

が肝心です。

また、親不孝の中身が、さんざん借金を作って、親がしりぬぐいをさせられたというたぐいのものであれば、親は生前にその子供に金銭の贈与をしていることになるので、特別受益の問題になり、すでに生前にたくさんもらっているから遺産はもらえないよ、といった解決方法が取れる場合はあります。

事案により、解決方法は様々です。ぜひ、専門家である弁護士に一度ご相談ください。

借金を残して亡くなった夫の妻、子供

Aさんは、父とともに小さな料理店を営んでおり、結婚して県外に住んでいる妹が二人いる。父が亡くなり、料理店をたたむことになったが、店舗の改装や、運転資金として父が借りていた多額の借金が残ってい…

続きはこちら

亡くなった親に借金があるかも

大手の商社を定年後の父は、趣味のゴルフや、年に数回の海外旅行を楽しむなど、優雅な老後を過ごしていた。そんな父が亡くなり、忌明けも終わったので、遺品を整理に来たAさんは、父の家の郵便受けから、…

続きはこちら

再転相続

夫Fさんと妻Mさん夫婦はいわゆる資産家で、それぞれの名義のマンションをFさんは2つ、Mさんは1つ持っていた。 子供は太郎と次郎の二人。太郎は、父であるFさんからマンションBを、次郎は…

続きはこちら